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【第8話】
『ネーミング・ライツ
(2004/3/23)


 ネーミング・ライツ(Naming rights)。直訳すると「命名権」ということになる。
大阪近鉄バファローズは、年間30億円の赤字解消のために、球団名のネーミング・ライツを売り出すという苦肉の策をひねりだしたが、ナベツネにつぶされた。ネーミング・ライツ云々の是非よりも、経営不振球団はそのまま消滅しろと言わんばかりの非情の対応にプロ野球の危機を感じる。よほどパ・リーグつぶしたいんだろう。実際、他に30億もの金を生み出すアイディアがなければ、近鉄は近い将来、5億円プレーヤーの中村紀を無償でナベツネの球団に放出せざるをえない。ダイエーの小久保みたいに。そこで、僕の考えた苦肉の策なのだが、近鉄は堂々とネーミング・ライツを売り出したりせずに、陰でこっそりナベツネにバレないようにやったらどうか。例えば、近鉄のヘルメット・ステッカーのスポンサー「アコム」から30億を借りる。アコムなら金は貸すほど持っている。その代わり、チーム名に「アコム」を入れる。「大阪アコム・バファローズ」ではない。「大阪近鉄アコムズ」にする。昔の産経アトムズを知っているナベツネは勘違いして「ああ、アトムズに代えたのか」と納得するだろう。さらに、メジャーから獲得した新ストッパーのカラスコの登録名は「ムジン」だ。ナベツネは「魔神?ベイの真似か」と問題にしない。ムジンが登場するときは、野球忍者・礒部らトランペッターが吹き鳴らす「むじんくん」のテーマにのって、応援団は「ランランランラララランラン、はじめての、むじんくん〜」と歌う。ここまでやれば、アコムも無利息で30億貸してくれるだろう。

冗談はさておき、僕としては、ネーミング・ライツの売り買いなんてよくないなあと思う。ゴダイゴも歌っていたが、「名前〜それは〜燃える命」。お金で買えるようなものではないはずだ。ハルウララで話題の高知競馬では、一個人が、協賛金一万円を払えば自分の好きなレース名をつけられる。高知競馬だけではなく、運営難のいくつかの地方競馬でも同様の協賛レースがある。しかし、がっかりするのはこれらのレース名がほとんど(今は無き)駅の掲示板かそれ以下のレベルにあることだ。ハルウララに武豊が乗った3月22日前後の高知のレースを例に取っても、「のりこに一生ラブラブ宣言特別」「池田正、昌子、繁大、偉冬特別」「地元の馬がんばれ!特別」「凱君祝一歳!バブもワンワン特別」「あやばあ89歳おめでとう特別」「景ちゃん卒業記念特別」と、すべてがこの調子だ。これなら「康彦、問題解決した、連絡待つ特別」も可ってことになる。タケホープの天皇賞から競馬ファン歴29年の僕としては嘆かわしい。競馬の世界は落馬事故や予後不良(安楽死)に至るレース中の骨折が日常茶飯事だ。死と隣り合わせである。1着賞金が10万5千円。中央競馬の未勝利戦の50分の1にも満たない安い賞金のレースだけど、騎手や馬は命をかけている。競馬に対して、騎手や馬に対しての敬意ってもんがなさすぎないか。アナウンサーの「勝ったのはトサノホマレ(仮名)!《のりこに一生ラブラブ特別》を制しました!」って実況を聞いて嬉しいのは、のりこの彼氏だけだ。「俺が金出してるんだ。文句ないだろう」と開き直るなら、あまりにも品がなさすぎる。もちろん、のりこにもあやばあにも凱君にも罪はない。

金さえ払えばどんな名前でもつけていいってことじゃない。実体と名前との調和は大切だ。「トヨタ・カップ」、「東芝日曜劇場」、「大正テレビ寄席」、いずれも調和していると思う。しかし、「Jリーグたらみオールスターサッカー」はどうか。「伊藤園レディース」ならぎりぎりセーフか。とにかく、冠をかぶせるときは、そいつに似合う冠かどうか考えてやれってことだ。


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