
【第7話】
『しめきり』
(2004/3/17)
| 突然ですが、“週刊”「蘇我拾遺物語」です。去年の7月から始まった連載が8ヶ月経って7回目。月イチのペースにもなっていないのに、いきなり週刊化を宣言します。っていうか、「原稿は締め切りがないと書けない」ってことを痛いほど感じたんですね。情けないけど。書きたい欲求は山々なんだが、書いてみると大した文章じゃない。それが分相応でも、誰よりも自分のことを過信しているのが自分自身なわけで、原稿を見てダメ出し。もうちょっといいのができたら送ろうなんて思っていると、三ヶ月くらいすぐ経っちゃう。こりゃいかん、締め切りがないと永遠に更新できないぞ、と思ったんで毎週月曜日(地球時間)を自分の締切日に決めました。その締め切りに間に合わせるために、もう自分ではダメ出ししないことにしたので、皆さん各自お願いします。 「ダメ出し」といえば、外房線の車中で不思議な会話を耳にした。今風のツンツン逆立ち茶髪のカレシがカノジョと思しき女の子に話している。「北海道に旅行に行こうと思ったんだけど、親からダメ出し食らっちゃって・・・」。そこでカノジョが問うた。「《ダメ出し》ってどういう意味?」。なんて答えればいいんだろうと思って、あとで大辞泉(うちは広辞苑じゃなくてこれなの)を引いてみると、「だめだし」はないが、「だめ(駄目)」のところに『E演劇などで、演出・演技などの悪い点についての注意や注文。「−が出る」』とあった。転じて、僕の解釈では、マスコミ業界において、企画のプレゼンテーションやらテレビの収録現場やら至る所で、それに携わるスタッフ・出演者らに対し、その「悪い点について注意や注文をつけること」を「ダメ出し」と言う。そんなパーフェクトな解答が出るのか否か、僕はカレシの言葉を固唾を飲んで待った。カレシは、わずかに躊躇してから、両手を胸の前でクロスさせてこう言った。「だめぇぇー!っていうこと」。その瞬間、『ドリフ大爆笑』で、いかりや長介が「ダメだこりゃ」って言ったあとの効果音が、僕の心に流れた。こいつにダメを出したい。「だったら最初から《だめぇぇーっ》でいいじゃん」。こうして言葉の意味は拡散し、やがて無意味になっていく。 さて、締め切りがないと何も書けないが、締め切りさえあれば、なんだって書けるって気になってくる。テレビ・ラジオの台本はもちろん、作詞・作曲、150号の油彩、巨大なオブジェだって造りますよ。こう見えても小学校から高校まで図工と美術はオール5だったんですよ、ええ。締め切りさえあればね。「尻に火がつく」って言うけど、締め切りがぐーっと近づいてくると、まさに火がついたように創作に必要な熱が出てくるのを感じる。例えば、バーベキューの木炭みたい感じ。火をおこすのは大変だけど、ひとつ完全に火がつけば、あとはちょっと煽るだけでいい感じの火が広がっていく。但し、「まだですか」「何時までにできますか」なんて、煽り過ぎるのは逆効果だ。せっかくの素材が黒焦げになってしまう。でなけりゃ生焼けのまま出しちゃうから。 一口に「締め切り」といっても、その設定は様々だ。番組の台本だと、生放送や収録の1時間前くらいが締め切りで、あとはコピーするだけってディレクターもいれば、自分でいろいろ書き込んだり修正したいので何時間も前に締め切りを設定する人もいるし、別の番組のスケジュールがあるので一日前にくれって人もいる。月曜日の番組なのに、土日は休みたいから「金曜の夕方までに」なんて言われると、「ラジオなんだからそんな賞味期限切れの原稿使うなよ」と思う。早すぎる締め切りだといい感じの火が熾らないし、あまり悠長にされると番組に穴を開けそうになるので、ちょうどいい締め切りを設定していただきたいと切に思う。料理も台本も火加減が大切。で、締め切りをちょっと過ぎたくらいが食べごろだってことも憶えておいてほしい。 |