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【第5話】
ひとりで居る人は渡す』
(2004/1/7)


 いやー、すっかり寝てしまいました。三ヶ月ぶりです。

寝言は口で言うものとは限らない。キーボードで打つ寝言もあるようだ。パソコンで原稿を打ちながら、眠気に負けてしまうことがある。いわゆる“落ちる”ってやつだ。落ちるか落ちないかの瀬戸際では、朦朧としながらも原稿を書き(打ち)続けているらしい。目が覚めてから液晶画面を見てみると、誤字脱字の類はもちろん、キー
ボードを押しっぱなしにしたためか、jjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjjj・・・・・こんなことになっていることもあれば、一応日本語ではあるが意味不明の言葉がつづられていることもある。

年末、WOWOWの「リーガエクスプレス」の台本を書いている途中に“落ちてしまった”。落ちた翌朝は大抵あわてて台本を書くはめになる。入稿がぎりぎりになって焦っているのに、原稿の中にものすごい寝言を見つけて笑ってしまった。「ブンデスリーガ 第17節 ダイジェスト」と書いてあるべき場所にあった寝言である。「ブ
ンデス ひとりで居る人は渡す」。

家族の証言によれば、そもそも僕はよく寝言を言うらしい。寝言はたまたまビデオにでも収めない限り、再生することができないので正確な内容はわからないが、妻が選んだ僕の“ベスト寝言”は、『にっぽん全国加山雄三連盟』である。寝ている僕が突然「加山雄三、加山雄三・・・」と言い出した。妻が「寝ぼけてるの?」と問いかけると、僕ははっきりと答えたそうだ。「みんな加山雄三。にっぽん全国加山雄三連盟」。

自分なりに分析してみよう。僕は加山雄三のファンではない。むしろ、あまりいい印象を持っていなかった。それは数年前、FM富士の番組収録の際、スタジオ前のロビーでふんぞり返ってテレビを見ていた加山雄三が《山田邦子、○億円の豪邸》というワイドショーのニュースを見ながら、「こんな家、○億円もしねえだろう」とつぶやいたのを目撃したからかもしれない。紅白では白組キャプテン、理想の父親アンケートではナンバー1の人物の、いかにも傲慢な、品の無い姿を見てがっかりした。そのことが潜在意識の中に強く残っていたのだろうか。つまり、僕の脳は「結局、従来の日本のシステムは、加山雄三に代表される、傲慢で、品の無い、ある意味では“理想の父親”と言うべき男たちのためのものだったのである」とかなんとか皮肉をこめて寝言にしたのかもしれない。と、こじつけることもできる。

でも、さっぱりわからないのは「ひとりで居る人は渡す」である。しかも、その前には「ブンデス」とつく。ちなみに「ブンデス」はドイツ語で「連邦」の意味である。
「加山雄三連盟」の「連」と「山田邦子」の「邦」。関係ないけど。事がサッカーであるから「渡す」は「パス」のことなのか。すると「ひとりで居る人」は、例えば10人守備のフォーメーションでたった一人前線に残されたフォワードなのか。

「ひとりで居る人は渡す」。まるで推理小説のダイング・メッセージのような寝言。
何か意味があるのか。その意味は僕の脳の中にあるのだろうか。


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