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【第4話】
『子別れ
(2003/10/2)


 「欺くばかり、偽り多き世の中に、子の可愛さは真なりけり」と申します。子供が可愛いという親の情愛、こりゃあもう決して嘘のないもんでございまして・・・。

古典落語『子別れ』の下りである。平成15年9月28日、日本ハムファイターズは本拠地としての東京ドーム最終戦を迎えた。僕は当日の昼前に放送された文化放送『フォークトレイン』のファイターズ・コーナーの台本に「・・・というわけでホーム最終戦、来場者にはいろいろなプレゼントがありますが、ファンにとっては何よりのプレゼントは《勝利》。ぜひとも勝って最終戦を飾ってもらいたいものです」と書いた。書いていながら「嘘だ」と思った。かぶりを振った。カブレラほど振った。ファイターズ・ファンは東京ドームに《勝利》を見るために通ったのではない。《勝利》の期待値が高いチームなら東京には他に二つある。東京ドームに通うファイターズ・ファンの心情は、子供の運動会を見に行く親の気持ちに近いものだ。一生懸命走る子供に精一杯の声援を送る。一等なら一緒に喜び、ビリなら「残念だったね」と肩を抱く。そのために俺たちはいるんだ。もちろん、一等賞になってほしい。だけど、どんなに足の遅い子でも「ビリに決まっているから見に行かない」なんて親はいない。

 『子別れ』。まさに、この日はファイターズ・ファンが愛する子供と別れる日だった。今日を限りに子は新しい親のところに行く。僕はファイターズを応援するようになって6年目。「親」を名乗るにはちょっとキャリア不足だが、義理の兄貴くらいの資格はあると思っている。親の気持ちは痛いほどわかる。別れたくはない。子も同じ気持ちだと信じている。

 別れの日、子は親のために頑張った。8回裏、小笠原の放った渾身の打球は左中間のフェンスを直撃して、金子と坪井がホームを駆け抜けた。しかし、9回に逆転負けを食らった。落胆。こんなことには慣れている。本当に願っているのは今日の1勝じゃない。「東京に残ってくれ」・・・本当の願いは胸の内にしまいみ、新しいお父さ
んお母さんに可愛がってもらうことを祈っている。それが子供の幸せのためなら、どんな辛い別れも受け入れようと思っているんだ。

 このゲーム、選手が打席に立つたびにオーロラビジョンには選手の直筆のメッセージが映し出された。「ファイターズはどこに行ってもファイターズです。これからも応援して下さい。小笠原道大」。胸がつまった。


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