相手を決めて野球みたいに毎回表裏があって9回終了の形式。
場合によっては延長戦もあるかも?



今回のゲスト対談者はアイスホッケー選手の春名真仁さんです。


1回表
 春名真仁様



 こないだは電話どうもです。さっき日光から帰ってきました。今日はBucks、3対4で敗れたけれど、今季いちばん熱い試合だったよ。3ピリ終盤、2点ビハインドでパワープレイのチャンスをもらって、マーク・マホン監督、ゴーリー上げて6人攻撃仕掛けたんだ。
 春名君が渡米してシーズン半分以上が過ぎたけど、イリノイ州クワッドシティの暮らしはどうですか? 所属しているクワッドシティ・マラーズってチームはどんなチーム? NHLは皆、イメージがあると思うけど、マイナーリーグのホッケーはどのくらいのレベルなんだろう? 「日本代表GK」ってキャリアはどういう風に受けとられるの? どういういきさつでマラーズに入ったの? 
 僕の知ってる春名真仁って人は「早大理工卒の変わり種のホッケー選手」で「ものすごくマイペースなタイプ」で、いや、もちろんアスリートとしてチャレンジするハートの部分はわかってるつもりだけど、何ていうのかなぁ、そんなに青春一直線みたいな人でもないでしょう。どうかすると「海外挑戦する!」って断言して、昼寝したら「オレ、何か言ったっけ」みたいなタイプだよねぇ。何で勝負かけたんですか? そして飛び込んで見つけたものはありますか?





 2004年2月1日 えのきどいちろう



1回裏
 えのきどいちろう様



 日光観戦お疲れさまです。バックスが負けたのは残念ですがまだまだ霧降は熱いようですね。プライド効果はどうでしょうか? 僕は今日スーパーボウルがあるため試合がなかったのですが天然の池のリンクでファンとスケートやホッケーをするイベントから帰ってきたところです。僕も長いことホッケーをやってきましたが天然の池で滑るのは初めての経験でちょっと興奮しました。

 すでに渡米してから3か月がたちましたが、インターネットの環境が整ったのもつい最近でやっと落ち着いてきたかなという感じです。クワッドシティはその名の通り4つの町からできていてミシシッピ川を境にイリノイ州とアイオワ州に分かれるのですがホームリンクはイリノイにあってアパートはアイオワにあるため僕はアイオワ州民といういうことになります。この時期は娯楽が少ないのか週末のホームゲームは7、8千人くらいは入っていて試合途中やピリオド間なども趣向を凝らしていてNHLの縮小版という感じで盛り上がってます。

 普段の生活は日光に居た時とあまり変わりなく午前中に練習して午後は休息といった感じなのですが、如何せん車がないためほとんど外出することがありません。外出しても歩いてスーパーで買い物程度です。あまりにやることがないので中古のギターを買ってしまいました。かなり外食も減ってほとんど自炊しています。

 僕の性格は1回表にえのきどさんが書いた通りのとてもいいかげんな男なのですが、海外挑戦に関しては古河電工アイスホッケー部が廃部になったこと(5年程前?)がきっかけとなりました。僕はその時社会人3年目でまだまだ不完全燃焼だったのでホッケーを続けることは早いうちに決めましたが、廃部が決まった時点ではバックスが出来る保証はどこにもなくて第2、第3の選択を用意しなければならなかったのです。そこで日本リーグの他のチームもしくは海外のチームでという選択肢が生まれてきました。結果的にバックスが誕生してその時はバックスに落ち着いたわけですが、そのあたりから海外にも興味が湧きはじめその翌年に古河を退社してプロ契約選手となった後からはいずれは海外でプレーしたいという思いが強くなりました。

 そしてその後の国際試合、特に昨年の世界選手権のスロバキア戦はその思いをより強いものにしました。それはこのレベルでもついていけるという自信とこのままでは彼等には勝てないというちょっと矛盾した考えで、言い換えればそのレベルで練習や試合を続ければそこに到達できるのではという思いです。そして昨年世界選手権から帰国してすぐに海外挑戦を決意し会社に伝え、そして後戻りができないよう(ほんとにしそうだから)に周りのみんなにも伝えました。そして3か月以上時間があったにもかかわらず日光を出る1週間前くらいから引っ越しにバタバタしはじめ、出発直前まで村井タダヒロと佐藤ゴウに「絶対、こうなると思った。」といわれながら手伝ってもらいなんとか「春名やっぱり日光にいるじゃん」というのを回避することができたのです。(ちゃんと身体の準備はしてましたよ。)

 僕は海外挑戦を決めて現マイティダックスGKアドバイザーのフランソア・アレール氏(バタフライスタイルの師匠)に相談した際、ヨーロッパもいいがまずは北米のマイナーリーグに行くべきだと言われました。ヨーロッパ各国でプレーするためにも北米での成績が世界標準となるとも言われました。そうして彼の推薦でマラーズのトライアウトに参加することとなったのです。やはり日本はホッケー後進国と思われているので日本代表の肩書きよりアレール氏の推薦のほうが断然効果があります。ロワを育て最近ではジゲール、ガーバー、アイビシャー等々をNHLに送り込んでいる氏の推薦は水戸の印籠なみです。今やまさにゴーリー界の虎の穴と言えるでしょう。そうして無事トライアウト(4人中2人)を通過し晴れて契約となりました。ただし契約を交わしたといっても週契約のため常に危機感はあります。他のチームではすでに4、5人ゴーリーが入れ替わったところもありますから。

 日本代表の肩書きも多少効果があって世界選手権でパルフィーやナギーやゼドニク(NHLのトップスター達)のいるスロバキアと試合をやったんだぞエヘン!といばると、みんな「へえ、すごいね。」と言ってくれます。でもそのあと必ず「で、何点取られたの?」と返ってきて「うーん。忘れた(ほんとは10点)。」とシュンとなってしまいます。

 クワッドシティマラーズはUHLという独立リーグに属しており完全なNHL傘下のチームではありません。基本的にNHLのファームリーグはAHL(野球でいえば3A),ECHL(2A)となっていますが最近それらのリーグは若手育成に重点を移してきてベテラン選手枠の制限などが厳しくなっているためベテラン枠が比較的多いUHL(1ゲーム7人)にもNHLやAHLで経験を積んだスキルの高い選手が結構います。マラーズにも30代の選手も5人程いてホッとしました。またAHLの数チーム(一応NHLのワシントンキャピタルズとも)とファーム提携をしていてシーズン中にコールドアップされたりもします。現在は3人コールドアップされています。

 UHLのレベルは他のリーグを見ていないため簡単に比較は出来ませんが、ホッケーライターの加藤美貴子さんはECHLとは遜色が無いくらいでスキルのあるベテランが多い分UHLのほうが上かもと言っていました。ただ僕自身の感想は早いシュートをどこからでも打ってくる、そしてとにかく激しいということです。まだ僕は参戦してませんが毎試合2、3回はファイトがあります。おそらくAHL,ECHL,CHLでもスキル、レベルの違いはあっても同じようなホッケーだと思います。スキル的には日本の代表レベルの選手なら十分やれると思いますが激しいアメリカのホッケーと週4試合の日程、そして7、8時間のバス移動にはある程度慣れが必要だと感じました。さらにサラリーキャップ(週1万ドル/一人週500ドル平均くらい)があるためルーキーはかなりの安月給になることも覚悟しなければなりません。オフシーズンは他の仕事をしている選手も多いようですし中には自分の会社を持っている選手もいます。

 最後に何か見つけたか?という答えですが、いろいろスキル面の課題は見えてきましたがまだまだ模索中です。バックアップゴーリーの調整の難しさなんかも実感しています。

 1シーズンを通してホッケーだけに限らず何かを発見してこの挑戦をいい財産にしたいとは思っています。





 春名 真仁


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